崔宗宝、バリトンの旅
にほんの里100選をめぐる
オペラ歌手 里の歌旅

第31回&第32回にほんの里100選記念コンサート in 浅里 & 須賀利

第31回 2013年4月26日 三重県南牟婁郡紀宝町浅里 浅里生活改善センター

崔宗宝演奏日誌

4月26日・27日の二日間、三重県の「里山100選」に登録された浅里と須賀利町でコンサートを開催しました。

今回一つの県に登録された二ヶ所で同時に開催できたのは、全て「友の会」東京支部の世話人・榎本さんのおかげです。彼女は、三重県の尾鷲の出身で、2年前から是非自分の故郷で私の歌を皆様に聞かせたいと言ってくれていました。事前に一度下見にも来て、浅里と須賀利町の担当者と打ち合わせをして、この2ヶ所で同時に開催することになりました。本当に榎本さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。

26日朝一番早い便で羽田空港から空路で和歌山空港に着きました。最初「何で三重県の里山に行くのに、和歌山に来たのかな?」と疑問がありました。でも、調べたら和歌山空港からの道は、浅里に行くのには一番近い道でした。浅里のコンサートは、14時スタートなのです。浅里に着いた時もう12時になっていたので、すぐコンビニでカップラーメンとおにぎりを買って車の中で昼ごはんを食べました。会場は昨年出来た公民館で、その隣が「里山100選」に登録された場所でした。山の斜面に約50戸ほどの家々があり、みんな石垣を築いて暮らしています。川と石垣集落の間にある水田も、とても美しく調和していました。私は目の前に広がる水田と山を見ながら「鐘が鳴ります」を歌い、この歌をますます理解することが出来ました。本番後、すぐ須賀利町に向かって移動しました。須賀利町は尾鷲市から40分ぐらい離れているところにあるので、夜は尾鷲市に泊まる事になりました。夕食は、榎本さんご夫妻に招待され「田舎」という店で和食を食べました。献立の中の煮魚がとても美味しかったので、追加でもう一品食べました。結局あまり食べ過ぎて、夜はほとんど眠れなかったです。

翌日10時に出発して、11時前に須賀利町に着きました。ここが、「100選」に登録された理由は瓦屋根の古い民家約200戸が、海から山へびっしり張り付く風景が素晴らしかったからです。とても、壮観な風景でした。残念なことは高台の古民家は、たくさんの空き家となってしまったことです・・・。
コンサート会場は、15年前閉校となった須賀利中学校の体育館で行いました。開演前用意した100席ぐらいの椅子が、開演30分前になると全然足りなくなり、結局200名の方々が来て下さいました。体育館で歌ったのは、正解でした。もし、別の会場だったら、30分ですぐに100個の椅子を調達するのは、出来なかったでしょう。特にこのような里山では!体育館には、58年前のヤマハグランドピアノがあり、私は、弾き語りで「砂山」「出船」など海のイメージンの歌を歌いました。体育館の響きがとてもよく、東京のサントリーホールにも負けてないと思いますよ!1時間ほどの本番で、12曲気持ちよく歌いました。ご来場の皆様の笑顔を見たら、どんな疲れも忘れました。

この日、奈良県に住んでいる私の友人の山本さんご夫妻も来てくれました。実は、この日の夜、山本さんのご自宅で、ホームコンサートを企画しておりました。19時、山本さんのご近所のおじいさんおばあさんがたくさん来てくださり1時間ぐらい歌いました。その後、皆様とコーヒーを飲みながら歓談しました。夜コーヒーのせいか、あまり静か過ぎたせいか、この日もほとんど眠れませんでした。

二日間で3回コンサートを行い大変疲れたけれど、たくさんの方々にお目にかかれました。わたしの歌を聞いて下さり、それが少しでも皆様のエネルギーになるのならば、何より嬉しいことだと思います。

では、つぎは、5月12日狭山市の「三富新田」と25日和歌山の「天野」に行ってきます。

再見         崔宗宝

写真提供 榎本えみ様 上から 石垣の家 熱唱 喜んでくださるお客様 フィガロ 地元コーラスと共演 海への石段で

第32回 2013年4月27日 三重県尾鷲市須賀利町 旧須賀利小学校体育館

地元新聞より

27日にほんの里100選記念コンサート(須賀利区と尾鷲市主催)があり、中国人バリトン歌手の崔宗宝さん(53)が日本や中国、世界の名曲14曲を披露し、会場に詰めかけた市内外の約170人が美声に酔いしれた。全国100ヵ所のうち、県内では須賀利町と紀宝町浅里が選ばれた。記念コンサートは崔宗宝さんが100ヵ所すべてを巡る。32ヵ所目となるこの日のコンサートには地元や市内、紀北町、奈良県から約170人が詰めかけた。崔宗宝さんは流暢な日本語であいさつ。公演前には須賀利の町を散策してこの場所に合ったきょっくをと急遽曲目を変更した。

会場にあったピアノの弾き語りで中国民謡の「牧歌」「故郷の月」「万里の長城」など中国歌曲を披露。「千の風になって」「荒城の月」などの日本歌曲、カッチーニの「アヴェ・マリア」「アメージンググレイス」「フィガロの結婚」など世界の名曲も声量のある美声で歌い上げ、会場を魅了した。曲間には「須賀利は空き家が多いので僕も別荘に一軒借りたい。お金があれば。」などと軽妙なトークで会場を沸かせた。アンコールで「君といつまでも」「北国の春」を披露して大いに盛り上がった。地元の山下智恵子さん(78)は「須賀利にこんなに人が集まるのはうれしいし、歌もすごくよかった。大好きなアメージンググレイスを生で聞けて最高」と笑顔で話していた。

コンサート終了後、住民との交流会に参加した崔さんは「海の目の前で歌える機会はめったにない。自然の中でゆったりとできるすごくよい環境。100ヵ所を回るのに10年ほどかかるが、近くに来たときは須賀利に寄って今度は釣りを楽しみたい」と絶賛。須賀利区の谷口昇区長は「100選に選ばれて急にコンサートの話が舞い込んできた。人が集まるか心配だったが市内や紀北町からもたくさん来てくれて大成功だった。崔さんがコンサートにとてもよい場所と言っていたので機会があればまたやりたい」と話していた。

地元新聞より「テ ン ゴ」

ガイナモンジャッタ。とにもかにも素晴らしかった。この感動はなんと表現していいのか分からない。まさに至福のときじゃった。

友人の車に乗せてもろて、バリトン歌手の崔宗宝さんの公演を聞きに行った。この公演は「にほんの里100選記念コンサート」と題して、須賀利地区が主催、共催は尾鷲市で旧須賀利小学校の体育館で開催された。

崔宗宝は北京出身で、地元の大学を出て1992年に来日し、94年に東京芸術大学に入学、98年同大学院を修了、アメリカに短期留学をした。その後さまざまなオペラなどに出演し高い評価を受けていたという。最初、3曲ほどピアノを弾きながら歌ってくれた。むろんこのピアノは須賀利小学校のものらしく、調律も十数年前にされたままらしい。しかしそれでも、われわれ素人にも不思議な感動を与えてくれた。また名曲中の名曲と紹介された「荒城の月」を中国語と日本語で歌った。

こんな素晴らしい公演は、」われわれの地域では二度と聞けるもんじゃないと思う。しかも無料なんじゃな。うまくまとまった文章がかけないのは、興奮がさめやらんからなんじゃろか。それにしてもこんなすごいコンサートを、どのようにして引っ張ってきたんじゃろか?主催者の須賀利区長さんに聞きたいと思っていたが、お忙しそうじゃったので遠慮した。

帰宅して、妻に「どうやったどな?」と聞かれて、「あの声量、そして艶のある声はガイナモンジャッタ。オレも負けたげ」とわけの分からんことを口走って笑われた。主催者の方々ホンマに有難うございました。心がすっかり洗われましたがな。

同行記 (榎本えみさん。須賀利出身の崔宗宝友の会東京支部長。今回のコンサートの実現の為地元と連携してくださいました。)
前夜、須賀利センターの小池センター長と3月までセンター長だった泉さんが夕食に同席してくださり、明日のコンサートの成功を予感しました。

当日よい天気に恵まれ、海は碧く静かな須賀利に着くと崔さんは早速地域の見学。その結果崔さんの故郷は増え続け、お気に入りの場所も増え続け、里の人々は大喜びの一日でした。会場での様子は冒頭の崔さんの日記に書かれていますので、省きます。後日岩田市長はじめ最初の窓口となってくださった商工観光課の佐野さん、谷口区長、センター長の小池さんからお電話をいただき、皆さんが会うごとに「よかったな」という感想を聞かせてくださり、本当にうれしいと言うことをお聞きして、私も夫も故郷への恩返しができたようなきがいたしました。(榎本えみ)

写真提供 榎本えみ様 須賀利の海 体育館いっぱいのお客様 フニクリフニクラ ピアノの弾き語り 須賀利熱唱1 若いお客様達 須賀利熱唱2 4/26浅里で榎本さんと

第30回にほんの里100選記念コンサート in 大神高開

2013年4月6日 徳島県吉野川市大神高開美郷ほたる館  

崔宗宝演奏日誌         

昨日(4月6日)徳島県吉野川市大神高開(おおかみたかがい)というところで30回目の里山コンサートを開きました。あいにく当日の天気は、低気圧の影響で雨でした。元々屋外コンサートを予定していましたが、急遽場所を変えて美郷ほたる館にしました。(変えて良かった!)昨日午前9時に徳島空港に着いたとき、迎えに来て下った四宮様は、私の友人の同校生でとても明るい方でした。彼女の乗用車に乗り込むと、いきなり車のラジオから サイソウホウの名前が聞こえてきました。実は、徳島県のNHKのFMラジオで里山コンサートのことを紹介してくれたのです。ラジオから流れる自分の名前を聞くのは、初めてのことでびっくりしました。

徳島空港から三郷村まで、風景はほとんど変わりませんでした。ところが、三郷村に入ると目に入ったのは、桃源郷のような景色で山は桃の花と桜が満開となり、まるで別世界でした。「里山100選」に選ばれた大神高開の場所に着くと、さらにびっくりしました。なぜかというと、石垣の段々畑いっぱいに芝ザクラも満開となり咲いていたからです。私は来日22年目で、初めて芝ザクラを見ました。とても感動しました。コンサートの会場は、石垣の畑の隣に200年以上前に建てられた古民家の前でした。ここに住んでいるのは、一人暮らしの93才のとくえさんというおばあさんです。すごくお元気で、このような所に住むと本当に仙人にもなれると思いました。目の前の山に雨が降っていたので、まるで中国の水墨画みたいで、ここに座って何も考えずにいると心が癒されます。私はもし仕事がなければ、ここにロングステイしたいなと思いました。ここで4曲歌ってから、場所を美郷ほたる館に移動しました。館内には、大工の職人さん手作りの縮小された古民家がたくさん展示されていて、これを見ると私は、本物の古民家がほしくなりました。このほたる館は、天井が高くて響きはとても良く東京のサントリーホールにも負けない感じでした。ここでたくさん歌を歌い、皆様にとても喜んでもらいました。歌が少しでも、皆様のエネルギーとなれば何より嬉しいことだなと思います。

次回は、4月26・27日、三重県の里山に行ってきます。では、また・・・・・。             

再見             崔宗宝

美郷ほたる館長 武田彰二様からのご感想

にほんの里100選に選ばれている100か所で、「里の歌旅」と題して無料コンサートの開催を目指している崔宗宝さんと榎本さんはじめスタッフの皆さんに感謝いたします。今回の美郷での開催が、第30回目の開催と聞きました。徳島県美郷大神の高開石積みで「シバザクラまつり」が開催中に絶景・日本遺産の石積みでオペラコンサートができた事に意義があったと思われます。

急峻な山の斜面にある約30段にも及ぶ石積みの段々畑でオペラを歌っていただこうとか、聴衆の方々はどこで聞いてもらうおうかとか、開演までの前座として徳島で考案された健康体操「阿波踊り体操」を見てもらい雰囲気を盛り上げ本番に入ろうなどと、コンサートの対応を考えておりましたが、当日は、あいにくの雨、春の嵐となりましたことを主催者として非常に残念に思っております。悪天候にも関わらず、崔さんからは、「素晴らしい石積みにシバザクラが満開の会場でコンサートができる事に喜びを感じる」とお褒めの言葉をいただいた事にスタッフ一同喜びを感じております。

崔さんのご厚意で、ほたる館でも歌っていただきました。テレビやラジオ以外でプロのオペラ歌手のコンサートを聴く機会のない美郷の高齢者の方々から「歌手の近くで美しい歌声を聴く事ができて嬉しかった」と喜びの声を聴く事ができました。今回の公演をご縁に、ほたるの発生地であります美郷で再度公演を開催して、もっと・もっと数多くの方々に聞いてもらえる環境を作りたいと思います。ありがとうございました。

お客様の山田有希様からのご感想

恵まれた容姿、バリトンの美声、熱い歌心」の三物を神から与えられた崔宗宝さん。私は失礼ながら、この日まで貴方のことを知りませんでした。ただ、美郷の芝桜をあえて雨風の強い4/6に観に行ったのは、山々の連なる大自然の中、一見不釣り合いに思えるオペラのコラボレーションに胸踊らされたためです。あいにくの天候でも、会場の人々を引きつける美声とパフォーマンスには、崔さんの子供のような純粋さと熱い歌心を感じました。自然と人間が共生する美郷で音楽を通して人と人の心が通じ合える素敵なひと時を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。また、徳島で貴方の声をお聞きできることを楽しみにしています。

写真提供 武田彰二様 榎本えみ様 上から 見事なシバザクラ 石積みシバザクラ 93歳の古民家の主とくえさん 雨中軒下で熱唱 阿波踊り体操 美郷ほたる館で熱唱 お客様も熱心に 役員の皆さん有難うございました

第29回日本の里100選記念コンサート in 阿波 

2013年3月17日 岡山県津山市 阿波地区 阿波公民館

崔宗宝演奏日誌

里山コンサートを再開して1週間後、3月16、17日と2日間、岡山県津山市にある「にほんの里100選」に選ばれた阿波という所でコンサートを行いました。5、6年前私の母が来日し、河口湖の美術館に遊びに行った時出会った吉田雅子様が、阿波の近くの加茂という所に住んでいます。彼女が朝日新聞の「人」欄で私を紹介した記事を読んで、是非阿波と加茂同時にコンサートをやりたいと考え、これを計画しました。元々2011年3月19日に予定していましたが、3月11日東日本大震災が起き、色々な問題を含めコンサートは延期しました。このコンサートを楽しみにしていた阿波と加茂の方々に本当に心からのお詫びを申し上げます。 16日の朝4:30起きて、本当は6時49分新横浜駅発の新幹線に乗るつもりでしたが、1分の遅れで乗れませんでした。結局次の新幹線に乗り、10:30に岡山に着いて、それから在来線に乗り換え津山に着いたら12:30になりました。吉田さん達と昼食を済ませて、早速加茂のコンサート会場に行きました。本番が15:00開演。140名の方が来場しました。加茂公民館の真木館長の話によると、3年前の公民館開館以来、初めてこんな沢山の人が来たという事でした。来場した方が生の声でコンサートを聞くのは、ほとんど生まれて初めてのとの事でした。中には「バリトンという楽器ですか?」というような質問もありました。終演後後ロビーでお客様をお見送りした時、皆さんは大満足して、ニコニコ笑いながら会場を去って行きました。 その後車で15分ほど移動し、17:00頃阿波に到着しました。泊まる場所は阿波交流館です。温泉もあり、食事後温泉に入って一日の疲れはすべて飛びました。温泉を出たら外の星空がすごくきれいでした。まるで富士山の頂上で見た星空のようでした。

阿波のコンサートは午前10:30開始なので、本番前のどの調子を少し心配しましたが、声を出したら、全く問題がなく、やっぱり温泉の力が大きいなと感じました。阿波は日本で珍しい4分の3成人式を行う行事があります。今年は第5回です。私のコンサートは4分の3成人式の後です。昨年の成人は9名でしたが、今年は3名でした。田舎で人口がどんどん減って行くのはとても深刻な問題だと思います。阿波は標高380m~600mの高さの間に集落が散在する高地で、年間の平均気温は12度C。11月下旬になると初雪が見られ、晩雪は3月となります。地区ほぼ100%を山林で占めることから、まさに「あるがままの自然」なのです。特に最近珍しくなった茅葺屋根の家が十軒あまり住まいとして残されていて、とても郷愁を駆り立てるものがあります。こんな素晴らしい里山にはもっと長く滞在したいなと思いました。次回は4月6日徳島の里山に行って来ます。 

再見!        崔宗宝

発起人の吉田様からの感想文

3月16・17日阿波・加茂での里山コンサート、響き渡る高らかな歌声に皆さんすっかり魅せられ、感動の渦が巻きおこりました。私が崔先生とお会いしたのは今から7年前。2006年5月に河口湖の旅行先で久保田一竹美術館の庭園での出会いでした。どうしても行きたかった美術館で着物の展示に心うばわれ、感動のまま館内の庭園を散歩している時に、ある一行に追いついたのです。50才位の年代の女性の方5~6人の中に、背が高く体格の良い、ハンサムな男性が一人。その中の少しお年を召されたご婦人を皆様がいたわりつつ話しかけ、談笑しつつ丁寧にご案内されておりました。それを側からニコニコ笑って眺めていらっしゃる男性の方。その場の雰囲気があまりにも温かく、ほのぼのとした光景に、妹とその場を通り過ぎるのは悪いような、憚られるような気がして、でも余り近づいても失礼だし、近づかず離れずの状態でそのまま続いて行きました。出口で隣の方に「失礼ですが、どんな関係の方々のお集まりなのですか?」とおたずねしました。「よく聞いて下さいました。今このお庭で歌を歌われたのをお聴きになりませんでしたか?」とおっしゃり、「たぶん館内でコーヒーを飲んでいましたので、聴いていません。」と答えると、「それはとても残念でしたね。」と、崔先生を紹介されました。中国から音楽の勉強がしたくて、日本に来られ、今各方面で活躍されております。私達は今海老名でコーラスを習っています。今日は北京からお母様が来られているので、私達が河口湖をご案内しているところです。崔先生はこれからますます活躍され、きっと有名になられるお方です。」とおっしゃいます。ご一緒に写真を写してもらい、崔先生のサインやご住所等々をその方(廣田様)からいただきました。「良いご旅行を続けて下さいませ」とお別れしたのでした。それからどうしていらっしゃるのだろうと思いつつ月日が流れました。2010年7月19日朝日新聞朝刊の「ひと」欄に「日本の里山で日中の歌を歌いつづけるオペラ歌手崔宗宝さん」と紹介されました。朝日新聞と森林文化協会が選んだ「にほんの里100選」で無料コンサートを始められた事、東京芸大在学中に日本の童謡や唱歌を歌い込むうちに日本人の心に近づけたような気がした事、「歌を知る事は心を知る事」なので、何年かかっても100選の地を廻りたいという記事が載りました。あゝやっぱりご活躍されているのだと、自分の事のように、うれしくなり河口湖でお会いした海老名の方にお電話したりしている矢先に、3か月後の2010年10月7日朝日新聞「声」欄に「里山に流れる崔さんの歌声」として、里山100選の中の一つ愛媛県久万高原町の方が投書されました。「生の音楽を聴く事が少ない私たちをすっかり魅了し、心豊かな気持ちでいっぱいになった。ますますのご活躍を願う」と結んでありました。私はもういてもたってもおられなくなり、すぐ、加茂公民館長(真木健一氏)に相談に行きました。阿波が100選に選ばれているので、一緒にコンサートしたらと、すぐ久万高原の公民館に詳しく尋ねて下さっている内に、崔先生をいろんな形で支援されている高木さんからボランティアで里山コンサートを開催させていただけませんかという内容のお手紙が阿波公民館長(西山亮二氏)に届きました。そして早速両公民館の計らいで阿波町づくり協議会、4分の3成人式(15才)実行委員会、PTA関係の方、加茂文化協会、町内連合会、老人クラブ連合会、コーラスグループ虹等々、それぞれの代表の方に集まって頂き、「加茂郷の自然を愛する会」を立ち上げて下さいました。阿波での4分の3成人式は阿波が「にほんの里」100選に選ばれた記念として、毎年15才の子供を地区あげてのお祝い行事として、毎年行われております。この式典の後にコンサートをという事になりました。いよいよ2011年3月にと準備を進めておりましたが、思いもかけないあの未曾有の東日本大震災!。。で止む無く延期となりました。どうしようもなかった事でしたが、残念でたまりませんでした。それから2年後の2013年3月16,17日崔さんと高木さんのどうしても阿波・加茂で歌いたいとのご要望と、自然を愛する会の皆様方のおかげで実現することができたコンサートでした。たった数分の出会い、あの時失礼も顧みずに私が声をかけさせてもらった事、そして色んな方々のご好意で開催できたコンサートに、私は今不思議な縁をしみじみと感じております。

阿波での第29回100選記念コンサートでは成人を迎えた3人の子供達に崔先生からCDをプレゼントされて「これから苦しい時、困った時、この美しい里山を思い出し、そして僕の歌を思い出して頑張ってほしい」と言われました。会場内は万雷の拍手でした。私は胸いっぱいになり、思わず友達の手を握り締めておりました。

加茂ではあふれる人で一杯。公民館始まって以来の多くの方が、地元の方は勿論、倉敷市、岡山市、津山市の方々も来て下さり、感激ひとしおでした。両会場とも予定時間30ふんオーバーの大盛会でした。崔先生は阿波の星空がきれいだった事、温泉がよかった事、懇親会で「ウド菜」「フキノトウ」の天ぷらがとてもおいしかった事、日本に来て初めて食べた等々とおっしゃいました。今庭で取ってきたばかりの「ウド菜」の匂いをかいで、珍しいと連発されました。袋一杯の山菜をお土産に持って帰られました。懇親会では阿波町づくり協議会の方が何年かかっても阿波に来て歌ってほしかった、ようやく実現できたとおっしゃって下さり、私はうれしくて涙があふれそうでした。とても和やかな懇親会でした。まだ桜も咲いていいないし、木の芽も芽吹いておりません。でも山菜に、深い山々に、きれいな水の流れの川に、この里山をいつまでも大切にしてほしいとおっしゃっていました。

あれから皆様方からお礼の電話、メール、ハガキ、手紙、手作りケーキ、しいたけなど届けて下さいました。あちこちでCDが流れ、色んな場所で話題になっているようです。私の力ではどうすることも出来ませんでしたが、皆さん方のお力添えと支えて下さいました方々のおかげです。皆様方に心からお礼を申し上げます。そしてこれから崔先生の歌声が全国に響いていくことを願っております。(岡山県津山市加茂町 吉田雅子様)

編集後記

2011年3月コンサート直前に東日本大震災が起こったため、延期となっていました阿波の里山コンサートが、熱心な発起人の吉田様初め加茂公民館長真木様、阿波公民館長西山様、町づくり協議会、文化協会、コーラスグループ虹など皆々様のご協力で実現の運びとなりました。心から感謝申し上げます。ご縁からご縁を結んで、公民館始まって以来の100名余のお客様に来ていただき、中には二つの公民館両方に来て下さった方もいました。成人式では卒業される生徒さんに「将来困ったことがあったら、この阿波のみなさんと、僕のことを思い出してがんばってください」とCDを手渡しました。吉田様初め地域の方々の人情の厚さに感動する旅でした。また必ず津山市に戻ってきます。そして、皆様に「ただいま!」という日が早く来るよう努力いたします。コンサート以後沢山の「素晴らしかった」「毎日CDを聞いている」「ありがとう」のお手紙やファックスが吉田様の所に届いています。その中から、雅な和歌に託した里山の皆様の声をお伝えします。  再見!(高木ユリ)

「高らかに 響く歌声 心満つ 奇しき縁の さと山に春」       (前原治恵子様 作歌)

 

写真提供: 真木健一氏 上からコンサート開始 やっと来れました! 歌声響き 満席以上のお客様 ありがとうございました! 崔さん大好き! 吉田さんとお友達 懇親会 役員さんと記念撮影 真木加茂公民館長と吉田さんと 阿波会場にて 自己紹介 お客様達 成人を迎えた若い人と役員さんと

☆☆ファンからのお便り その1 津山市 中島匡子様

どうして加茂・阿波に?
芸大の声楽科出身、バリトン歌手のコンサートを新聞で知り、それも山深い加茂と阿波での演奏を知り、クラシック大好きな私、これは聴かないではおられないと、津山より30分、夫と二人で聞きに行きました。司会者の冗談を交えた崔さんの紹介、崔さんが来られる事になったいきさつなど加茂町の吉田さんからの詳細な説明を聞くことが出来ました。 いよいよ歌声  大柄でかっこ良い崔さんの歌う初恋、平城山など日本の歌曲、オペラのアリア、荒城の月は日本語と中国語で、中国の歌曲、万里の長城など素晴らしい歌声でした。特に啄木の初恋には心を奪われ涙が溢れ出ました。バリトンの美声に酔いしれました。なぜ外国の人がこれほど日本の心を歌えるのか驚きです。
追っかけしました、CD購入
昨日の歌声にすっかり興奮して娘と共に加茂より車で15分田舎の中の田舎、岡山県の二つの里山の一つである阿波公民館で行われた里山コンサートに再度聴きに行きました。昨日と違った歌曲も聴くことが出来、昨日同様堪能しました。加茂では崔さん、吉田さん達とカメラにも収まり、また、CD3枚購入、1枚は合唱団でバリトンで活躍している親戚に送り、カンツオーネ、日本の歌曲集は毎日のように聴いています。車で聴くCDは何度聴いても飽きることなく当時の演奏が蘇ります。カンツオーネも素晴らしいです。
長身から溢れる豊かな声量に、2日間にわたり心おきなく至福のひと時をすごさせていただきました。また、近くで崔さんのコンサートがありましたら是非追っかけしたいと思います。  最後に遠くまで来てくださり、素晴らしい歌声を聴かせて下さった歌手崔さんに有難うの気持ちでいっぱいです。同時にこのような機会を与えて下さった関係者の皆様に「謝 謝」です。
☆☆ファンからのお便り その2  前原治恵子様
 
黒く光る岩を  滑り落ちる滝音
木もれ日の中のぼくは 透明な風を浴びている
雲海にいくつもの 山の端が見えかくれ
峠にたたずむぼくは 止まった時の中に居る
君も来ないか ぼくのふるさと
降りそそぐ星空と 共に語ろう
布滝である。説明にあるように、黒光りする岩肌を流れ落ちる様は他にはあまり例がないと思う。木々の中を歩けばマイナスイオンいっぱいである。加茂町行重から津山市に抜ける峠越えの道である。峠の最も高い地点で車を降りて、加茂町側を見おろすと絶句。声が出ないのです。雲海にいくつもの山の頂上がまるで島のように浮かんでいる様は、ほんとにここが加茂なのかと疑ってしまうようである。 尚、ここに来る時は傷だらけになってもかまわないと思われる車で来てください。素晴らしいものを手に入れる際は多少の犠牲を払って下さい。
   

第28回にほんの里100選記念コンサート in 葉山上山口

2013年3月10日 神奈川県三浦郡葉山町上山口地区 上山口会館 

崔宗宝演奏日誌

「にほんの里100選」の里をめぐる100回コンサートを1年ぶりに再開しました。今日の会場は神奈川県葉山町上山口地区です。ここが100選に選ばれた理由は、農家の人々と援農ボランティア・葉山山里会の人々が棚田の保全をしているということだそうです。朝9時に家を出る時少し風がありましたが、気温はとても暖かく、天気予報で25度位になりそうだということでした。これは5月中旬の気温になるでしょう! 私の家は会場の葉山町まで30キロ位ありますが、今日は日曜日なので、道路が全く混んでなく、10時30分に逗子駅に到着。11時45分に到着した、この「100選コンサート」を全面的にサポートしている高木さんご夫婦と鎌倉に住んでいる伊東さんと合流し、11時に葉山上山口に着きました。迎えに来たのは上山口町内会長の倉林様でした。

私たちはまずコンサート会場に入り、音響などの準備を終了させ、その後会場のとなりのそば屋(若菜)で食事しました。私は冷たいザルそばとてんぷらを注文しました。20年ほど前、そばを食べる時、そんな美味しいと思った記憶がなかったです。知らないうちにだんだんその深い味がわかって来て、こんな美味しい食べ物を日本で食べられて、すごく幸せだなと思いました。最後にそば湯をつゆに入れて、一滴まで残りなく全部飲みました。食事後、倉林様の案内で、上山口の棚田周辺を散策しました。私は倉林様に「棚田をめぐる小道の両側に桜や梅などの木を植えたら、上山口地区の景観はもっと美しくなり、観光客も沢山来るでしょう」と話しました。

コンサートは14時開演。収容人員80名の上山口会館は140人の超満員となり、私もびっくりしました。まず1曲カッチーニのアヴェ・マリアを歌いました。明日(3月11日)は東日本大震災からちょうど2年となるので、震災で犠牲になった方々に捧げる鎮魂曲として歌いました。その後日本の歌「荒城の月」「鐘がなります」、中国の歌「万里の長城」など日中の歌6曲。それからオペラのアリアやイタリアカンツォーネも歌い、最後にアンコール3曲を歌いました。ご来場の皆様は大喜びでした。ステージの正面に棚田が見えるので、山田耕筰の「鐘がなります」という歌は、この風景とぴったり!!

今日は1年ぶりの里山コンサートで、私も気持ちよく歌いました。また来週16日に岡山県の阿波地区に行ってきます。ではまた。。。。。。

再見!            崔宗宝

写真提供:杉山由樹様 上から 棚田をバックにした崔宗宝  町内会長さんご夫妻達と棚田散策  フィガロになりきって  満席のお客様  お世話になった役員さん達と全員集合!

編集後記

 葉山といえば、御用邸があり、おしゃれな湘南のビーチというイメージがあります。でもちょっと内陸部に入り、低い山が連なる長柄、上山口地域は「ここは長野県だろうか?」と思ってしまうほど、様子が違いました。山には緑の新芽が芽吹き、環境保護地域に指定されている結果、全く開発から逃れることが出来て、棚田も健在でした。天皇陛下皇后陛下も必ず毎年訪れて、棚田の周りを一周されるとの事、会場の上山口会館には両陛下、秋篠宮様ご一家などのお写真が飾られていました。もっと沢山あった棚田もだんだん少なくなり、現在は棚田保護のボランティア活動のサポートで維持されています。町内会長の倉林さんご夫妻初め、役員の方々のご尽力で、80名定員のホールに148名のお客様で、ついにエントランスホールとの間のドアを開け放してそれでもいっぱいでした。心からお礼申し上げます。途中からブラボーの連発で、最後のアンコールでは崔宗宝と会場全体が湧き上がる興奮でひとつになる珍しい体験をしました。さすが葉山、都心に近くクラシックの素養のある方ばかりかと思いましたら、案に相違して初めての方も多く、それでも近くでコンサートがあったら、また行きたい、町内会でバスを仕立てて欲しいなどと倉林会長に訴えておられました。まだまだ町内会での一緒の行事に参加する方が多く、洗練されたしかし仲良く行き届いた地域コミュニケーションのあり方に感動した一日でした。皆様ありがとうございました。葉山福祉会館ホールに必ず戻ってきます!再見!(高木ユリ)

第3回にほんの里100選記念コンサート in 西下ケ橋

2009年9月20日 栃木県宇都宮市白沢・西下ケ橋地区 西鬼怒川地区グラウンドワーク活動センター

下見旅行

この日は打ち合わせのため、栃木県宇都宮市の白沢、西下ケ橋両地区を訪ねました。ワーッと広がる田んぼには白鷺があちこちに、大きなアオサギもちらほらといました。草むらを歩くとバッタ屋やカエルがワラワラと逃げます。あまりたくさんなので、踏んだかもしれません。目の前で2m位の蛇が、用水のコンクリートのヘリの上で急いで反転して逃げました。グラウンドワーク西鬼怒というNPO法人を地元ボランティア、西下ケ橋地区、白沢地区の皆さんで組織し、19年前から多様な動植物、景観、農業と生活などを保護保全しておられます。朝日新聞社の「にほん の里100選」に選ばれ、日本中から農業体験、農業研修、多様性生物観察などの目的で小・中学生や農家の方々が見学に来られています。普通の田んぼや農家のすぐ隣にこのような貴重な地域が残っているのが素晴らしいです。 日光の山々の雪解け水が斜面林の麓から湧水となって、あちこちから流れ出して小川となり、他地区ではもう絶滅したと思われる生物が沢山生息しています。よほど清らかな水でないと生息しない梅花藻(ばいかも)がゆらゆらし、白い梅に似た花を咲かせています。同じうようにめったに見られない水ニラが群生していました。
西下ケ橋地区の農村体験交流館のそばには立派なお祭りの山車が保存してありました。美しく彩色された江戸時代の物で、今は6年に1回出番となるそうです。村々を練り歩く様子は京都の祇園祭に負けません。河内自治センターのご担当者様やグラウンドワークの皆々様お世話になり有難うございました。(高木ユリ)

コンサート当日

海老名から車で行き、およそ3時間半で白沢公園に着きました。
まず西下橋地区グラウンドワーク西鬼怒活動センターで80名ほどのお客様の前で、いつものように日本歌曲、中国歌曲、イタリアンカンツオーネを歌い喜んでいただきました。 次に白沢公園内の河内農村体験交流館で100名ほどの自治会の方々や外部のお客様の為に歌いましたが、館内に入りきらない方も沢山いらしたので、灯籠流しの前に、外でも歌いました。まだこのようなコンサートに慣れていなかったのですが、200人ほどの大きな拍手に支えられて、無事成功することができました。       (高木ユリ)

グラウンドワーク西鬼怒中澤さんからのお手紙

「にほんの里100選」記念第3回日本・中国二つの故郷を歌う音楽会が第1部と第2部とで開催されました。 *第1部はNPO法人グラウンドワーク西鬼怒が地域の自然環境保全、復元活動を続けている西下ケ橋で行われました。開催までの貴重な時間をいただき、崔さんと関係者と「にほんの里100選」の地鬼怒川の西に広がる豊かな自然環境に恵まれた地域を案内したところ、地域の素晴らしい景観にも感心されていました。尚、「築こう・水と緑のネットワーク」と言う私共の活動コンセプトについてもご理解いただけるようお話しました。 *続いて多くの人が集まっている河内農村体験交流館に戻り、音楽会を催しました。会が始まると更に地元の人もつめかけ盛大な音楽会となりました。会場の人達も崔宗宝さんの美声に聞きほれ感嘆の声をあげていました。中国の歌・日本の歌、それぞれ興趣のある歌を見事なバリトンで」歌い上げてくれました。予定時間が来ると、会場から高々とアンコールの声があがり、崔さんは再度、中国と日本の歌を歌い上げてくれました。最後に地元の少女からお礼の花束の進呈をうけ盛況のうちに終了となりました。 *第2部はNPO法人グラウンドワーク活動センターに会場を移し、灯籠流しの前に音楽会が開催されました。灯籠流しの参加者と共に120人の人達で館内はエントランスまでいっぱいに溢れ、第1部同様の進行で、アンコールには1部を上回る数の歌を披露していただきました。2部ではお礼の花束はNPO法人グラウンドワーク西鬼怒の田んぼの学校の生徒から渡していただき、崔さんも感激していたようです。 音楽会終了後、あたりも暗くなり、星空のもと幻想的な雰囲気の中で旧九郷半川で灯籠流しが始まりました。NPOで企画した行事であり、地元の人達の協力を得て、お囃子・太鼓・また短い時間ではありましたが夜店等も出して頂き大変有意義な一夜を過ごすことが出来ました。また崔宗宝さんは、灯籠流しが終わっても最後まで私共と歓談されていました。(グラウンドワーク中澤様)

主催:NPO法人グラウンドワーク西鬼怒

NPO法人グラウンドワーク西鬼怒 http://www2.ucatv.ne.jp/~nisikinu.snow/index.html Tel:028-673-9766

悠々人の日本写真紀行(西鬼怒川流域)http://www.geocities.jp/hitosht/03osyudo08/04kinugawa.html

写真説明(上から)梅花藻が揺れる小川、江戸時代につくられ今も現役の山車、西下ヶ橋熱唱、花束贈呈、白沢熱唱、灯籠流し   提供:グラウンドワーク西鬼怒 高木ユリ

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