里ニュース



[2009-01-06]


 ある海辺の里で、91歳の海女さんに、いつまで潜るのかと尋ねたことがある。「海が止まるまで」と彼女は言った。自分が海の一部、という感覚を持っているように思えた。里には不思議なセリフがたくさんある。
 日本列島を旅すると、万華鏡をのぞいている気がする。気候、風土の移り変わりとともに自然の姿が変わり、人の営みも変わる。そこに生きる人間の風味や香りが変わる。日本は狭いと言うが、多様性の幅はとても広い。生物多様性だけでなく、この文化多様性も保全すべきだ。
 秋田の八森はハタハタ漁で知られる。乱獲で資源を復元できなくなる例が多い中、漁を制限してハタハタを復元させた。それは人と自然の物語だ。里には様々な物語があり語り部がいて、知恵や知識を何百年も受け継いできた。それが里の魅力でもある。
 だが日本は戦後、すさまじい変化を見せた。80年代に来日した私の目には、日本人は長く背負ってきた荷物をすべて捨てようとしているように見え、危うさを覚えた。
 里は持続型の食料生産現場でもある。自給率の低い日本には、いざという時の宝物になる。どんな形で残すべきか。100選が、議論のきっかけになると期待している。

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[2009-01-06]


 100選の里はわずか数軒の集落から220平方キロに約7千軒が広がる散居村まで大小さまざま。深刻な過疎化と高齢化も進む中で「里の営みを持続させようと努力を続ける元気な里」です。
 人々の暮らしによって育まれてきたぬくもり漂う空間である里を未来へ残していくために朝日新聞の紙面で100選の里を紹介していきます。
 テレビ朝日系列では各地の里を紹介する番組をスタートさせます。4月には名古屋で選定記念のシンポとイベントを開催します。
 (関連URLはテレビ朝日のHP)
     【にほんの里100選事務局】
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【関連URL】
http://www.tv-asahi.co.jp/sato100/



[2008-11-30]


 午後1時、山田洋次さん(映画監督=委員長)、あん・まくどなるどさん(国連大学)、森本幸裕さん(京都大学)、鷲谷いづみさん(東京大学)、粕谷卓志さん(朝日新聞社)の5人の選定委員が集合。事務局や朝日新聞記者などが見守るなか、選考会が始まった。

■“人”という視点を
 まず、それぞれの調査員が担当した里について写真を使って報告。それに対して選定委員から、さまざまな質問や意見が投げかけられた。
 「いま提案された里は、農業景観としてはすばらしいが、あまりにも単一なモノカルチャー農業だ。生態的には持続可能性の面で問題がある」
 「報告に“人”が見えない。景観と人とのかかわりをもっと記述するように」
 「その里は私も知っている。生物多様性の面でも人の面でもすばらしい。それに比べて二つめの候補は見劣りがする」
 「そこはあまりにも有名だ。里100選では、新たに“見出した”という視点がほしい」
 「単にため池が多いというだけではだめ。人や社会とのかかわり、生物多様性との関係が重要。特に写真のような“皿池”に分類されるものは生物多様性に乏しい」
 「報告では生物多様性の評価が“ふつう”ランクだが、その里はもっと高いはず。希少種だけでなくゆたかな里海の生態系が見られる」
 「その森は原生自然なので、それ自体は里の指標としては馴染まない。森の生物多様性を地域の住民がどうとらえているか、どうかかわっているかを評価のポイントにすべきだ」
 こうして報告と質問、議論は、予定をオーバーして午後6時半ちかくまで続いた。

■景観モザイク
 さて、結果はというと、内定したのは98の里だった。選定委員のみなさんの“きびしい”選考もあって、2カ所が欠けてしまった。これについては事務局が再検討と再調査をおこない、追加の候補地を提案することになった。
 選定委員会の全体を通して指摘されたのは、見た目だけでなく、その背後にいる人、人のかかわりをもっと重視するようにということだった。生物多様性について言及が少ないという点も指摘された。
 生物多様性は実際、「むずかしかった」というのが調査員全員の正直な感想だ。そこで私たちは、その里がどんな景観(ランドスケープ)で構成されているかを記録した。景観によって生き物の暮らしようが類推できるのではないか―。
 区分した景観は、@集落、A河川、B池沼、C湧水、D湿地、E海辺、F水田、G畑、H茶畑、I果樹園、J草地、K里山の12である。日本の里は、こうした景観ユニットがモザイク状に組み合わさっている、というのがこの提案だ。
 そして、今回内定した98の里について、その里をもっとも特徴づけている景観をひとつにしぼって集計してみた=グラフ。集落、水田、里山の順に多いのは、やはりこの三つが日本の里を形づくる代表的な景観ユニットなのだろう。また、河川、池沼、湧水、湿地、水田をあわせると40カ所になるが、これは“水”に関連する景観である。生物多様性という点で、高い可能性をもつのではないかと考える。
         (「にほんの里100選」事務局)

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[2008-09-16]



◆進む現地調査 400地点に絞る
 応募者から寄せられた推薦のコメントと、現地に詳しい研究者・NGO・自治体関係者らの意見を参考に、2千を超えた候補地を朝日新聞社と森林文化協会が400地点ほどに絞り込んだ。
 現地調査には、里を10の要素に分類して観察する調査票を持参。居住区や河川、池沼・ため池などの各要素ごとに景観や利用法、管理の仕方などをチェックし、評価する。
 現地調査終了後、約200地点のデータを選定委員会に提出。それらが11月以降の委員会で論議され、「100選」が決定される。
                           【にほんの里100選事務局】





[2008-05-02]



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