平久里下(へぐりしも)千葉県

受け継がれる共有林

丘陵地の農村。地域で共有林をもち、間伐や枝打ちなど管理も行き届く。地域になにかが起きたときの蓄えとして伝わってきた。

  • 交通:富津館山道鋸南富山ICから車で15分/JR内房線岩井駅から車で15分
  • 特産:房総の海・山・里の幸
  • 食事:食事処ばんや(魚介)0470-55-4844/百姓屋敷じろえむ(茅葺古民家・要予約)0470-36-3872
  • 直売:道の駅 富楽里とみやま 0470-57-2601/道の駅「三芳村」0470-36-4116
  • 関連ウェブサイト:南房総市観光協会

※ 交通アクセスや店舗情報などは、お出かけ前にご確認ください。

※ 車ナビは、里を訪れる際の目標ポイントを数値化したマップコードで、()内が施設名や地点です。地図では★で示しました。カーナビのマップコード検索で利用できます。

25. 平久里下

2014年05月08日

ガイド にほんの里100選5 グリーンパワー2014年5月号から

人が集う 共有林と茅葺き民家
 
 温暖な房総半島南部に位置する平久里下(へぐりしも)。稲作の他、園芸や酪農が営まれる農村部の背後に、地域の財産である共有林約120ha が広がっている。

伊予ケ岳北峰から見た平久里下付近。正面の山などに共有林が広がる。左は伊予ケ岳南峰の岩場


 
 現在の共有財産管理委員会の前身に当たる施業森林組合は1926(大正15)年の設立。茅場(かやば)や薪炭林(しんたんりん)にスギなどを植え、その木々は戦後の木材不足の時期に伐採され、地域に利益をもたらした。お祭りの屋台の新調や消防車の購入、青年館建設などへの支出が委員会の記録に残る。木材の価格低迷で大規模な伐採からは遠ざかっているが、最近も間伐は続けられていて、林内はきれいに整備されている。伐(き)った材を集めて農業ハウスなどで暖房用燃料に活用する仕組みも動き出した。
 
 委員長の池田信雄さん(72)は「いずれまた良い時も来る。その時まで共有林を受け継いでいかなくてはならない」と話す。地域の若者たちへ声を掛け、一緒に境界確認や除伐をするようにしている。
 
  ▲  ▲  ▲

果樹の向こうに見える茅葺き民家「ろくすけ」


 
 江戸時代後期に建てられた茅葺(ぶ)き民家を借り、「ろくすけ」と名付けて活動拠点としたのはNPO 法人の千葉自然学校。10 年ほど前から利用し始め、屋根を少しずつ葺(ふ)き替えたり、座敷に囲炉裏(いろり)を復活させたりしてきた。今では千葉市など都市部から、子どもやシニア世代が自然体験、ボランティア活動のために訪れる。草刈りや竹林の整備を引き受けるなど、地域との交流も盛んだ。「地域の人が先生となり、地元の産物を使いながら、お金が回る仕組みを『ろくすけ』を拠点に作っていきたい」と事務局長の遠藤陽子さん(76)。
 
 近くには、修験の山である伊予ケ岳(336.6ⅿ)や南総里見八犬伝ゆかりの富山(とみさん)(349.5ⅿ)、菅原道真をまつる平群(へぐり)天神社など歴史的遺産が豊かだ。隣接する地域とともに、里道をたどるハイキングコースの整備、自然体験や特産物加工のプログラム実施など、グリーンツーリズムの展開にも力を入れている。
 
(グリーンパワー2014年5月号から転載)

2012年04月12日

★報告 ◇にほんの里100選 千葉県南房総市「平久里下」 3/3(土)

 

 3月3日、朝日新聞アスパラクラブと共催で、「にほんの里100選」の平久里下(へぐりしも、千葉県南房総市)を歩いた。房総半島の南部にある戸数150ほどの農村地帯で、温暖な気候を利用したスイセン栽培が古くから行われている。

 当日の参加者は関東一円からの31人。案内は、平久里下地区の小澤明義さん、三橋正道さん(酪農家)、原勝美さん(同)、そして同市鋸南町在住の川崎勝丸さん(千葉県山岳史研究会)の4人。歩くコースは、4人の方と相談してあらかじめ決めた約8㌔のフットパス(里の道)。集落や田畑、樹林のあいだを抜け、一部は奈良時代から使われていたという古道が含まれている。(地図を添付)

 今年は半月ほど季節が遅めとのことだが、咲き始めたばかりの紅梅、白梅、そしてスイセンの白い花やナバナ(菜の花)の黄色い花が、道行く私たちの目を楽しませてくれた。一方で、放棄された耕作地やはびこるにまかせた竹林も目立つ。「ここ10年ほどでイノシシの出没が急増してしまった」というのも、人の営みが後退したことと無関係ではなさそうだ。

 一方で、都市近郊型の農業で頑張る農家も健在だ。フットパス沿いに目立つビニールハウス群はセロリ栽培用。質の高さが自慢の特産物だ。酪農を続けている農家も10軒ほどあるとのこと。道すがら、遠くに見える牛を飼う小屋は、のどかな田園風景の点景となって

 今回、私たちに「地元食」の昼食を提供してくれたのは、NPO法人千葉自然学校。千葉県内で都市と農漁村との交流事業を展開する市民団体だ。平久里下地区にも茅葺きの古民家を活用した拠点をもっていて、私たちはそこで昼食をいただいた。桃の節句らしい明るい彩りの地元食だった。

 「桜の咲く頃、里はもっときれいになる。その頃またおいで」と案内してくれた三橋さん。地域資源を活用している市民団体があって、都市住民を受け入れてくれる積極的な地元住民もいる。古い歴史を刻んだ田園風景も残っている。平久里下は、グリーンツーリズムの可能性がいっぱいつまった里だった。(海老沢)

                                                                               (投稿・森林文化協会)

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