三富新田(さんとめしんでん)埼玉県

江戸期の地割り生かす

江戸時代の開拓地割りをそのまま生かす。間口72メートル、奥行き675メートル。屋敷、畑、雑木林の順に細長く区画された農村集落。

  • 交通:関越道所沢ICから車で10分/東武東上線鶴瀬駅からバス20分
  • 特産:野菜類、茶
  • 食事:伊佐沼庵(茅葺古民家)9049-226-3780/レストランサイボク 042-985-4272
  • 直売:コシキョウファーム(地卵)042-993-0793/JAいるま野福岡農産物直売所 049-261-0738
  • 宿問い合わせ:所沢市観光協会事務局 042-998-9155
  • 関連ウェブサイト:所沢市観光協会

※ 交通アクセスや店舗情報などは、お出かけ前にご確認ください。

※ 車ナビは、里を訪れる際の目標ポイントを数値化したマップコードで、()内が施設名や地点です。地図では★で示しました。カーナビのマップコード検索で利用できます。

2013年01月28日

ぽかぽかになった落ち葉掃き

  野菜農家さんを手伝って、1月27日に雑木林の落ち葉掃きをしてきました。案内された林には、コナラを主体とした落葉樹が育ち、一面に茶色い落ち葉が敷き詰められたようになっていました。用意された道具は、長い竹でできた熊手と、「はちほん」と呼ばれる大きな竹籠です。熊手で掃き集めた落ち葉を、みんなで籠に詰めていきました。ぎっちり詰めると重さ60キロを超えるほどになるので、簡単には持つことができません。でも、この籠は丸くて横にして転がすことができますので、一人でも軽トラックの前まで運んでいけました。今では作れる人も少ない貴重品のようですが、すばらしい先人の知恵ですね。

 1区画の雑木林は、数十メートルの間口に対して、奥行きは数百メートルもあります。作業を始めた時には反対側まで見通せなかったのですが、約30人で3時間ほど進めたら、ようやく林の向こうが見えるようになり、そこで昼食に。作業でぽかぽかになったところへ、温かなけんちん汁によるもてなしもいただいて、真冬とは思えない暖かさを感じることができました。

 この日集めた落ち葉は2年ほど熟成させて堆肥とし、広い畑にすきこまれます。この辺りでは、サツマイモを中心にサトイモやニンジンほか、さまざまな野菜が作られています。伝統的な雑木林の管理からできる堆肥がそうした栽培に役立って、首都圏の人々に供給されているのも、一つの森林文化と言えるのでしょうね。(森林文化協会)

2012年10月31日

ルポ にほんの里100選④ 藤原勇彦 グリーンパワー2011年4月号から

  

ゆるくて自由な「アライアンス」で / 循環型農法の発展と環境保全の試み

 

参加者に地元野菜を使った豚汁がふるまわれた

 埼玉県所沢市郊外、屋敷林の大きなケヤキがそびえる三富(さんとめ)江戸農法の会代表の横山進さん宅。納屋に、「三富アライアンス(連携)」の人々が集まってくると、薪ストーブの傍らで暖まっていた大柄な番犬が、「仕様がないな」という顔つきで起きだし、表へ出てゆく。野菜の出荷用のケースに座布団を載せ椅子代わりにしながら、人々は火を囲む。「薪だけはいくらでもあるから、遠慮なく焚いてね」と横山さん。所有地の平地林を間伐したクヌギやコナラの薪が燃え上がる。ストーブの上では時に干し芋が焼かれ、時に殻つきの銀杏がはぜる。

  

▪生産者・消費者・専門家が一堂に▪

 

 横山さんのお母さんがいれる地元のお茶を飲みながら、銀杏の殻を一心に割っているのは、東京大学大学院の鬼頭秀一教授。三富の自然再生・生物多様性保全を目指し足を運ぶ。近隣の川越市にある東京国際大学の堀内一教授は、地域の自然と伝統を守りつつ国際展開するための情報基盤づくりを試みている。県川越農林振興センターの坂芳則所長や所員の人々、所沢市民大学修了者の会「ところざわ倶楽部」の清水仁一会長や、生活クラブ生協所沢支部の人々の顔も見える。地元所沢にキャンパスのある早稲田大学自然環境調査室の大堀聰調査主任も、時にやってくる。

クヌギ林のあちこちで展開される人海作戦

 生産者と消費者、行政や研究者と市民、様々な立場の組織と個人が、多士済々、フラットな関係で自然環境や農業について議論をし、活動を企画し、かつ、食べる。この「ゆるく」自由な雰囲気が、三富新田の伝統的循環型農業の継承と自然環境保全を目指す「三富アライアンス」の特徴だ。

 

「三富の持続的農法を世界へ」

 

 三富新田は江戸時代、柳沢吉保(よしやす)が藩主の川越藩によって開拓された、当時の〝農業団地〟。関東ローム層に広がるカヤ場に木を植え、ヤマと呼ばれる平地林(雑木林)と畑地、屋敷地を一体として約5町歩(5㌶)ずつの短冊形に地割りされてい

落ち葉堆肥をすきこんだ三富のサツマイモ畑

る。水は11本の深井戸を掘って確保。以来300年、ヤマから薪炭や堆肥をとり畑づくりをする循環型の営農により、人の手が加わった二次的自然環境が形成された。現在は川越、所沢など5市町にまたがり、首都圏有数の野菜産地として、また武蔵野の面影を残す里地里山的生態系として、都市近郊にありながら高い生物多様性を保っている。

 ただし、ここ40年で、三富地区の平地林は4割ほど減っている。燃料革命と化学肥料の普及で、薪炭材や落ち葉堆肥の供給元としての必要性が減り、切り売りされたり、手を入れないまま萌芽更新できずに荒れる所も多い。さらに、宅近開発で地価が高騰。農地に比べて林地は相続税が高いため、代替わりの際に処分される例も増えた。防火のため開拓時に張り巡らされた幅広の六間道路は、トラックの乗り入れに好都合とあって、倉庫や工場、産廃処理場が、昔からの地割りに食い込み広がる。

 「三富アライアンス」の中心メンバーである横山さんも、相続に苦労した。しかし、「畑1反歩(10㌃)にヤマ1反歩(の落ち葉堆肥を入れる)」という先祖伝来の信念で、平地林を保った。さらに、近隣の平地林の地権者の同意を得て、間伐や下草刈りなどの手入れ、落ち葉掃きを引き受けている。「落ち葉堆肥を使う三富の野菜をブランド化したい。安心でおいしい野菜の適正な値段を消費者に納得してもらい、ヤマへ還元したい」「三富の持続的循環型農業のやり方を、世界に広める種をまきたい」というのが横山さんの夢だ。

 

▪1000人のヤマ掃きを皮切りに▪

 

 1月29日。快晴に恵まれた三富新田のくぬぎ山地区(狭山市堀兼)に、埼玉や東京から老若男女のボランティア300人近くが集まった。1月初めから地区内の各所で継続的に行われた、「三富千人落ち葉掃き大会」のメーンイベントだ。

 参加者は班別に分かれ、インストラクター役の横山さんの指導で、ゆっくりと腕を伸ばしては竹の熊手を手前へ引く。カサコソと音を立てて掻き寄せられる枯れ葉は、集まればだんだん手ごたえを増し、冬の柔らかな木漏れ日の下で額が汗ばむ。集めた落ち葉を山にして、次の場所へ。約5㌶の林で掻き集めた落ち葉は、この日だけでざっと30㌧。これに水や米ぬかを加え数年かけて発酵させ堆肥にする。サツマイモ、サトイモ、ニンジン、ホウレンソウなど、三富産のさまざまな野菜作りに欠かせない。

 産廃処理施設から発生するダイオキシン問題などを契機に、これまでにも、三富地区では自然環境保全を目的とする自発的な動きがあった。県を中心とした有識者らによる「くぬぎ山地区自然再生協議会」、登録1000人を超えるボランティア組織「さんとめねっと」、NPO、各種団体による、ヤマの手入れや苗木作り、落ち葉掃きなども盛んだ。これらを有機的に連携させ、一致した目標へ向けて情報交換や協議をしよう、というのが「三富アライアンス」の趣旨だ。昨年9月、所沢市内に630人を集めて開催された「『農』と里山シンポジウム――三富を未来に」の実行委員会メンバーを中心に結成され、今回の「千人落ち葉掃き」は、その初イベントだ。30以上の団体・グループに声をかけ、参加者は、目標の延べ「1000人」をゆうに上回った。単独では達成しにくい目標を「共同して実現」することを目指す「アライアンス(連携)」の今後が、三富の農と自然再生のカギを握っている。

            (グリーンパワー2011年4月号から転載)

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